IBDと仕事-職場に病気を伝える?伝えない?-
平岡佐規子
岡山赤十字病院 消化器内科
IBD患者さんから、診察室でよく受ける質問の一つがあります。
「会社に病気のことを伝えた方がよいのでしょうか?」
実は、この質問に対する唯一の正解はありません。
まず知っておいていただきたいのは、病気のことを職場に伝えるかどうかは、基本的には患者さん自身が決めることだということです。
病気を伝えるメリット
病気のことを職場に理解してもらうことで、必要な配慮を受けやすくなります。
例えば、
- 通院や検査のために休暇を取得しやすくなる
- トイレに行きやすい環境を相談できる
- 夜勤や出張について配慮を受けられる
- 体調不良時に業務量を調整してもらえる
といったことが考えられます。
また、急な再燃や入院が必要になった場合にも、職場の理解があることで対応がスムーズになることがあります。
病気を伝えるデメリット
一方で、不安を感じる方も少なくありません。
「責任のある仕事を任せてもらえなくなるのではないか」
「昇進や異動に影響するのではないか」
「周囲に余計な心配をかけてしまうのではないか」
このような心配を抱くのは自然なことです。
実際には職場の雰囲気や仕事内容によって状況は異なります。
病気への理解が十分な職場もあれば、まだ慢性疾患に対する知識が少ない職場もあります。
すべてを詳しく伝える必要はありません
病気のことを職場に伝えるかどうかに正解はありません。
IBDだから必ず職場に伝えなければならないわけではありません。
また、「伝える」「伝えない」の二択ではありません。
病気のことを詳しく説明する方もいれば、「定期的な通院が必要な病気があります」「体調によってはトイレに行く回数が増えることがあります」など、仕事に関係する範囲を中心に伝える方もいます。診断名や治療内容まで、必ずしも詳しく説明しなければならないわけではありません。
ただし、病気について全く伝えていなかったために、体調不良や休職が必要になった際に職場との意思疎通がうまくいかなかった、というケースもあります。
大切なのは、「伝えるか、伝えないか」ではなく、自分に必要なサポートを受けるために、どのような情報を共有しておくとよいかを考えることです。
困る前に相談してみましょう
病気が落ち着いているときには、仕事上の問題を感じないかもしれません。しかし、再燃してから慌てて相談するよりも、上司や人事担当者、信頼できる同僚など、職場の中に少なくとも一人は相談できる相手をつくっておくと安心です。
また、職場への説明に不安がある場合は、主治医や看護師、医療ソーシャルワーカーなどに相談してみてください。
IBDと付き合いながら働くうえで大切なのは、「病気を隠すこと」でも「すべてを話すこと」でもないと私は感じています。
ご自身の病状や働き方に合わせて、無理のない形で周囲と情報を共有していくことが大切です。
自分に合った働き方を考えながら、必要なサポートを受けていきましょう。