IBD診療における医療連携について
横山 正
よこやまIBDクリニック 院長
皆さんは日頃の診療を大学病院で受けていらっしゃいますか。それとも身近な診療所でしょうか。
潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)は国が指定する難病で、残念ながら根本原因や完治できる治療法が見つかっていません。したがって、将来の治療法を研究している大学病院で多くの患者さんが診断治療を受けることが本来の姿といえます。
しかしながら、国内のUC患者数が30万人を超え、CDの方も7万人以上といわれています。また薬物療法や外科治療の進歩により、重症や中等症であった患者さんが軽症や寛解期に導かれることが多くなりました。
患者さんからも、普段は通院の便が良い身近な病院や診療所(クリニック)に通院したいという希望が聞かれます。
国の医療制度は、2年に1回の診療報酬改定でその方向性が明示されます。令和8年度改定では、大学病院を中心とする特定機能病院と一般の医療機関が共同して医療の質を保ちながらアクセスを改善する医療連携が打ち出されています。
図 外来医療の機能分化のイメージ(厚生労働省スライド)
図の左側の特定機能病院等では専門的な医学管理を実施することとなっており、その下には専門外来の確保と明確に記載されています。
紹介、逆紹介という言葉を今後聞くことがあるかもしれません。
- 紹介:地域の診療所や病院では手に負えない状態の場合に、特定機能病院等に診療情報を提供すること
- 逆紹介:状態が落ち着いたため、特定機能病院等から地域の診療所等に患者さんを移すこと
今回の診療報酬改定では、特定機能病院等と地域の診療所が共同で難病の診療にあたれるように「連携強化診療情報提供料」というしくみが見直されました。これまでのように急性期が過ぎれば逆紹介されるだけではなく、特定機能病院等においても診療継続が容易になるしくみです。詳しくは医療機関でお尋ねください。
皆さんにとって気がかりなことは、この「地域の診療所等」で十分な診療を受けられるかという点かもしれません。
私は約10年前から入院ベッドのない診療所(無床診療所)でIBDの患者さんを診ておりますが、つねに隣駅の大学病院や基幹病院の先生と医療連携をとってきました。急に悪化したり、手術が必要な場合などは紹介し、一方で安定して就労就学のため夕方外来や土曜日の外来を希望される方を受け入れてきました。
その中で考えたIBDの医療連携における診療所側のハードルは、次のようなものです。
- UCもCDも急に悪化することがある
- CDでは小腸病変の管理が必要である
- 治療薬が日進月歩で、常にキャッチアップする必要がある
- 治療薬の中で、院内で投与する生物学的製剤は高額で冷所管理である
- 高額な薬剤を使用すると診療報酬の平均点数がほかの診療所に比べ格段に高くなり、これだけの理由で地方厚生局(厚生労働省の出先機関)から指導を受ける
これらの課題に対しては、診療所側も自主的に勉強会を行い、大学の先生方を講師にお招きして患者さんのお役に立てるよう努力しています。
IBDの医療連携は国の方針もあり今後も進めていく必要があります。患者の皆さんにとって信頼できる主治医の先生を持つことはとても重要です。
診療側もこれを十分に配慮して、上手な医療連携体制を築いていく必要があると考えています。