みんなで支えるIBD診療
〜患者さんもチームの一員です〜
長沼 誠
関西医科大学附属病院
潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)は、長いつき合いになることの多い病気です。症状が落ち着いている時期もあれば、悪化する時期もあり、その時々で必要となる治療や生活上の工夫も変わってきます。
そのため、一人の医師だけで診療を行うのではなく、多くの専門職が連携して患者さんを支える「チーム医療」がとても重要になります。
先日こんな経験をしました。
他院で潰瘍性大腸炎と診断された若い患者さんが、私の外来を受診されました。明らかに緊張した様子で、治療について説明しても、本当に理解できているのか、納得できているのか判断がつきませんでした。
「じゃあ、こっちのお兄さんに話を聞いてもらおうか。」
私はIBD診療に精通した看護師を紹介しました。診察室を出たあと、看護師がゆっくり時間をかけて話を聞き、治療について説明すると、患者さんは安心した表情になり、最終的には提案した治療を前向きに受け入れてくださいました。
この時に改めて患者さんを支えるのは医師一人ではないということを感じました。
チーム医療の中心となるのは主治医ですが、それだけではありません。
- 看護師は日常生活で困っていることや自己注射の方法、体調変化への対応について相談に乗ります。
- 薬剤師は薬の飲み方や副作用、飲み合わせを確認し、安全に治療を続けられるよう支援します。
- 管理栄養士は病状や栄養状態に合わせた食事を一緒に考えます。
- 医療クラークや受付スタッフは診療が円滑に進むよう、患者さんが安心して診療を受けられる環境づくりに貢献しています。
それぞれが専門性を生かしながら、一人の患者さんを支えているのです。
実は、チーム医療で最も重要なメンバーは患者さん自身です。日頃の症状や生活の変化、副作用への不安、治療への希望を伝えていただくことで、医療スタッフはより適切なサポートを行うことができます。
困ったことや不安なことがあれば、一人で抱え込まず、ぜひ医療スタッフに相談してください。
「来月大事なイベントがある」
「妊娠を考えている」
「通院回数をできるだけ減らしたい」
といった希望は、とても大切な情報です。こうした思いを遠慮なく医療スタッフに伝えていただくことで、その方に合った診療を一緒に考えることができます。
チーム医療をおこなっていて一番うれしいと感じるのは、治療が軌道に乗り、患者さんの笑顔をスタッフみんなで共有できたときです。
患者さんを良くしたいという思いは、医師だけが持っているものではありません。多くのスタッフが同じ方向を向き、それぞれの専門性を生かしながら日々診療に携わっています。そして、患者さんの笑顔を一緒に喜び合える瞬間こそが、私たちにとって何よりのやりがいだと感じています。
患者さんもチームの大切な一員です。チーム全員で、皆さんが安心して自分らしい毎日を彩れるよう、一緒に歩んでいきたいと思っています。